9月2012

受付の先生 そして 読書の効用

 とある日、小学生の塾生に「受付の先生」と呼ばれたことがありました。たぶん私の名
前をまだ覚えていないか、または名札を見ても何て読んでよいかわからなかったのでし
ょう。でもそのとき、その子が言った「受付の先生」というニュアンスになにか心地良さを
感じました。塾の中で勉強だけでなく、できるだけなんにでも対応する。今流にいえば「コ
ンシェルジュ」なのでしょうか。実は一方で塾開始前のメンテナンススタッフとしての役割
も勝るとも劣らず重要なのですがこちらは空気のような存在です。皆さんがこのことに
気付かないことが通常・正常なのだと思っています。

 今まで脳についていろいろ述べてきましたが、今回はそれに関連して「読書」につい
てです。

 まだ暑い日が続いていますが、もうお彼岸も過ぎて季節的には秋だと思います。食欲
の秋であると共にやはり読書の秋。今回は読書の効用について述べていきます。今ま
で述べてきた脳の話を思い出しながら読まれていくと面白いと思います。

 小さきころから読書に親しむと
  「集中力の持続時間が長くなる」
  「物語の理解に必要なことが身につく」
  「読書により異文化等への理解・共感する能力がつく」
などがついてきます。これらはその後の勉強のスタイル(自習・自学)の基礎ともなりま
す。勉強することの持続、新しい概念を理解するための新しい知識等の獲得、新しい物
を自分の物とし且つ共感的理解をする。このようになれば勉強は楽しいものに、少なくと
も毛嫌いしてやらなくなることはないと思います。全ての子供たちにその辺を感じてもら
えればと思っています。

 また、この頃のサセックス大学からのレポートによると、わずか6分間の読書でストレ
スの3/2以上が軽減され、散歩や音楽鑑賞よりも効果がある結果のようです。脳にとっ
て音楽鑑賞のような受動的行為より、読書という能動的のほうが効果があるということ
です。肩こりに対してもみ治療をするより肩まわり等の運動をすることの方が効果があ
るのに似ています。愛読書を常に持ち歩き、リフレッシュするためにお気に入りの場所
をちょっと読む。覚えておいて損のない方法です。

 読書=能動的行為であることは、テレビ・テレビゲームなどが受動的であることと決定
的に違います。受動的にテレビゲームを行っている間、脳の活動が低下を示すデータは数々あります。しかし、能動的行為である読書は脳を間違いなく活性化します。文字か
ら与えられた内容を想像によりイメージ化したり、行間にあることを読み込んだりして脳
の機能をフル活用します。その間神経も発達し、ひいては脳の体積も増えていっていく
のだと思います。
 習慣化できるとよい読書、勉強方法の基礎となりうる読書、脳トレにもなる読書、みん
なに習得してもらいたいものです。               
これが私の最後のブログです。短い間でしたが、ありがとうございます。つたない文章で
したが塾生諸君や皆さんの参考になれば幸いです。

節電反動冷え そして 脳の体積が増える

 暑い夏にも関わらず、世相としては「節電」が徹底されていました。そんな中、「節電反
動冷え」という症状が世の中に蔓延しているようです。「節電反動冷え」とは節電の中、
直接冷たいものをたくさん飲んで体を冷やし、その為体調が悪くなることのようです。昔
から子供が冷たいものを食べすぎたり飲みすぎたりしてお腹を壊すのは定番でしたが、
大人も同じような理由で体調が悪くなってしまったようです。塾生の中にもそのような様
子を見ることができます。まず、冷水器の水がよく売れました。暑い中通塾してくるので
致し方ないかと思いますが、一方でお腹の調子を壊し授業中でも「トイレ休憩」となってし
まう塾生もいました。体調管理は大切です。暑さに負けず元気に秋を迎えてほしいと思
います。

 さて、前回は「鬼トレ」について述べました。今回はその効能のひとつについて述べ
ます。

 「鬼トレ」を行うと前頭前野の血流量が増えるともに脳の体積も増えるようです。もとも
とは2000年頃の雑誌「サイエンス」に「ジャグリングの訓練を行った後に、ものの動きを
感じる頭頂葉や側頭葉の体積が増えた」という論文が発表され、それから「脳トレ」や運
動等の様々な訓練で脳の血流量の増大だけでなく脳そのものの体積が増えるという
「結果」の把握もされるようになりました。ちょうどそのころでしょうか。子供を扱った月刊
誌に「脳をMRIで画像化し判定し、能力等不足していると思しきところを訓練により強
化し、後に再度MRIで確認する」という話が載っていました。当時脳の血流量が増える
脳トレ全盛期でしたが「血流量が増える=脳が活性化する=知能が上がる」という解釈
が普通に行われていました。それに対し、「脳そのもの自体の変化が確認できなければ
確証は持てない」という意見もありました。脳の変化をMRI画像で確認するこの方法は
私には理に適っているように見えました。子供の場合、「MRI画像診断の後不足部分を
補うためのトレーニングが課せられ、家で訓練し、数か月後に再度MRI画像診断で脳
の変化を確認する」を繰り返すようです。(実は大人でもこの内容は変わらないようで
すが)

 ただこの方法の難点は費用が掛かりすぎることです。(例えば1回10万円で最低2回
は必要となる)この点を除いて考えれば通常の健康診断のようにも考えることができ
ます。診断結果に対し経過観察・訓練対応をする訳です。たとえば「子供が我儘で・・。」
という場合、MRI画像診断を行って専門医が改善点を見つけ、それに対応したトレーニ
ングを課す。一定期間後再度MRI画像診断を行う。すべての子供が健康診断を受ける
ように実施することも将来可能かもしれません。しかし脳に関するこの画像診断は学校
の健康診断のように強制的に受けさせることは少々乱暴かもしれません。一方で、MRI
画像診断を基本的には無料で学校で健康診断のように受診することができ、プライバ
シーは保護されるという条件になると、多くの保護者に受け入れられるかもしれませ
ん。後は「処方されたトレーニング」をちゃんと家庭で実践できるかという「学校の宿題を
ちゃんとやる」というようなことと同じ俄然卑近な課題となってきそうです。いずれにしろ、
脳を鍛えるのに王道はないということのようです。地道な訓練という話に戻ってきます。
やらねばならぬのなら「さっさと終わらす」志向性がやはり鍵のようです。

息抜き そして 鬼トレ

  第二教室の入り口ドアが鉄扉からアルミ網入りガラス扉に替わって2週間ほどが経ち
ました。これによる影響と思しき塾生たちの行動の変化がありました。 多くの塾生は休
み時間に入り口横にある給水器で水を飲みます。そしてそのとき給水器横にある「塾ナ
ビポイント交換商品一覧表」を眺める塾生が多くいました。今回、そのような塾生の中か
ら入口下足箱簀子まで足を延ばし、網入りガラス越しに外を眺める塾生が出てきまし
た。そこからは隣の家の屋根やビルとともに光が丘公園の木々も見ることができます。
視線を遠くまでやり、一息いれるのはまた格別なのかもしれません。よい息抜きができ
ればと思います。

 さて、次は前回から続きの話です。

 この間記憶について述べてきました。そんな折、任天堂から東北加齢医学研究所川
島隆太教授監修の「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」というソフトが販売さ
れています。テレビCMなども行われているので知っている方も多いと思います。このソ
フトはワーキングメモリー・短期記憶を鍛えるものです。従来からある「脳トレ」ソフトとど
こが違うのでしょうか。今回はその辺の話からはじめていきます。

 今までの「脳トレ」は、100ます計算に代表されるように計算を早く行い結果的に脳の
前頭前野が活性化され訓練されていくという道筋でした。多くのトレーニングは「何秒で
できたか」を記録していき、成長を確認していきました。もともとは高齢者の痴呆傾向に
歯止めをかけるためのトレーニングとして開発されました。しかし、痴呆の歯止めがか
かる→知能が上がるとされ、初等教育にも適用できるのではないかと文科省をはじめと
する小学校関係者が採用していった経過があります。しかし脳の前頭前野の血流量が
上がり、脳が活性化される→知能が上がるということなので、頭にフォトセンサーをつけ
た実験で血流量があがることが確認できたトレーニング、またはその類似が「脳トレ」と
なっていったようです。「脳トレ」はパソコンの言葉で言えばCPU(中央演算装置)・RAM
(ランダムアクセスメモリー)・ハードディスクのうち、CPUの演算速度を速めることを目的
としたトレーニングといってもよいかと思います。(脳トレソフトの中には短期記憶に関す
るソフトもありました)

 今回の「鬼トレ」もきっと前頭前野の血流量は上昇するのだと思います。しかしそれだ
けに留まらず、一時記憶=短期記憶に特化したトレーニングのようです。例を挙げま
しょう。一ケタの足し算・引き算を二つ行います。一番目を計算しその答えを覚えておく。
その状態で二番目の計算をする。し終わったら一番目の答えを書き出し次の計算=三
番目へ移っていきます。今までの「脳トレ」と違うのは、答えを記入するまでに次の計算
をし少々時間を経過させることです。このように1問前の答えを記入するのを1バックと
いい実際のソフトはnバック(二問前、三問前、・・・n問前)まであります。「鬼トレ」を行っ
た方の感想を読むと相当の集中力を必要とするようです。そこが「鬼トレ」と呼ばれる
所以のようです。任天堂の説明によると「鬼トレ」は1種類5分以上行ってはいけないよ
うです。東北大学での実験により、短期間に長時間トレーニングをするよりも長期間短
時間トレーニング(任天堂では5分×8種類=40分が上限のようです)を行う方が効果的
のようです。(長時間トレーニングは対人コミュニケーションに関する前頭前野の体積が
減少するという結果もついてきているそうです)

 「鬼トレ」は受験生が受験勉強とともに行うことも効果がでますが、一瞬の判断を行わ
なければならない運動選手たちにも効果があるようです。「鬼トレ」の結果がよくなるこ
とは、脳の前頭前野の血流量が多くなるとともに脳の体積も増えるようです。その結果と
して脳のワーキングメモリー=短期記憶が強化され勉強だけでなく人間活動すべてに
良い効果をもたらすようです。一部では「創造性」まであがるという結果もあるようです。
「脳トレ」はもともと中高年以上の方々対象にしたソフトでした。今回の「鬼トレ」は中高
年対象ではなく発展途上の若い人々が行うことが効果的のようです。その意味では
「脳トレ」以上に多くの人々に影響を与える可能性を感じます。

退職のご挨拶 そして 長期記憶

 第二教室の針谷 昇です。この度一身上の理由から2012年9月30日をもって退職い
たします。短い期間ではございましたが、皆様には大変お世話になりました。また至らな
いところが多々あったのではないか思っております。あと約一ヶ月ではありますが、その
間の第二教室運営と後任の方への引き継ぎを粛々と行っていきたいと存じます。重ねて
皆様にお世話になったことを感謝いたします。本当にありがとうございます。

 いままでブログで「記憶シリーズ」について述べてきましたが、9月中も続けていきます。
よろしくお願いします。

今回は三つ目の長期記憶についてです。世の中で「記憶した」という場合はだいたい
この長期記憶のことを指しています。この長期記憶が学習した成果として評価の対象と
なるからだと思います。記憶容量は大変大きく「ほぼ無制限」、記憶維持期間も「ほぼ半
永久的」と言われています。

 短期記憶としてある程度の時間保持されたものは長期記憶に送られます。これを「記
銘」といいます。そして一度長期記憶に「記銘」された記憶はなかなか「消える」ことはな
いようです。また、長期記憶に保存することを「貯蔵」といい、貯蔵された記憶を思い出す
ことを「想起」といいます。昔勉強してしっかり記憶したはずなのに月日が流れて忘れて
しまったというのは、記憶がなくなるわけではなく、「想起」「記憶の検索」がうまくできて
いない場合が多いようです。このことを「忘却」といいます。

 記憶を「想起」しやすくする方法は二つあるようです。一つは間隔をあけてまめに何度
も復習する、もう一つは記憶と記憶の間に「関連性」をつけて情報を検索しやすくすると
いうことです。

 間隔をあけて復習することは普通に行われていると思います。これを行うと情報が「
忘却」しにくい状態になるようです。覚えられないものを日を変えて再度確認することは
ある意味勉強の基本になっています。英単語を覚える覚えることを例にとってみましょ
う。1日英単語5個づつ覚えるとします。まず、何回か単語を書くことでスペルを覚えま
す。その日は日本語を見て英単語がちゃんと書けるか確認をします。もし、ここで2単語
スペルミスがある場合、この2単語を次の日にまわします。まずその日の5単語のスペ
ルを覚え、最後の英単語確認の時に前日の2単語を混ぜ7単語をチェックします。ここで
スペルミスをした単語は次の日にまわします。まわされる単語の中にはまた前日からの
単語がはいっているかもしれませんが、区別する必要は全くありません。そのようにして
いくうちに自分にとって難関だった英単語も軍門に下ります。もし次の日にまわす英単語
が、長期記憶の「想起」にでなく、短期記憶→長期記憶への「記銘」に不安がある場合、
最後のチェックからではなくその日の5単語を書いて覚える段階から一緒に行うほうがよ
いでしょう。

 もう一つの記憶と記憶の間に「関連性」をつけて情報を検索しやすくする方いろいろあ
ります。記憶の内容を一度イメージとして頭に浮かばせ記憶してく、動作と関連して記憶
していく等あるようです。英単語を記憶する場合の例で次のようなものがありました。英
単語10個を覚える場合、見開きの左ページにその単語の和訳が10個(アンダーライン
付)入っている文章が掲載され、右ページに10個の英単語が単語帳のように並べられ
ているのです。通常は左ページに英文が載っているのですが、今回の場合英文なしで
和訳の文のみあるわけです。日本人にとって最もなじみのある日本文の内容に英単語
がちりばめられている感じです。日本文を思い出せば英単語が思い出される仕組みで
す。関連付けを極端にした場合で、覚えるべき英単語(3~5単語)を一文の英文に入れ
てしまい、和訳→英文→単語として覚えていく方法もあります。この場合、一度覚えた後
で「和訳→英文」の音声を流しておくだけで「想起」のトレーニングにもなります。

 長期記憶については昔からいろいろな方法が提案されてきました。しかし、長期記憶
になる前の感覚記憶・短期記憶の段階で問題があって記憶できないのか、長期記憶に
なった後の「想起」「記憶の検索」に問題があって「想起」できないのかによって対応の仕
方も変わってくることをお分かりいただけたと思います。