退職のご挨拶 そして 長期記憶

 第二教室の針谷 昇です。この度一身上の理由から2012年9月30日をもって退職い
たします。短い期間ではございましたが、皆様には大変お世話になりました。また至らな
いところが多々あったのではないか思っております。あと約一ヶ月ではありますが、その
間の第二教室運営と後任の方への引き継ぎを粛々と行っていきたいと存じます。重ねて
皆様にお世話になったことを感謝いたします。本当にありがとうございます。

 いままでブログで「記憶シリーズ」について述べてきましたが、9月中も続けていきます。
よろしくお願いします。

今回は三つ目の長期記憶についてです。世の中で「記憶した」という場合はだいたい
この長期記憶のことを指しています。この長期記憶が学習した成果として評価の対象と
なるからだと思います。記憶容量は大変大きく「ほぼ無制限」、記憶維持期間も「ほぼ半
永久的」と言われています。

 短期記憶としてある程度の時間保持されたものは長期記憶に送られます。これを「記
銘」といいます。そして一度長期記憶に「記銘」された記憶はなかなか「消える」ことはな
いようです。また、長期記憶に保存することを「貯蔵」といい、貯蔵された記憶を思い出す
ことを「想起」といいます。昔勉強してしっかり記憶したはずなのに月日が流れて忘れて
しまったというのは、記憶がなくなるわけではなく、「想起」「記憶の検索」がうまくできて
いない場合が多いようです。このことを「忘却」といいます。

 記憶を「想起」しやすくする方法は二つあるようです。一つは間隔をあけてまめに何度
も復習する、もう一つは記憶と記憶の間に「関連性」をつけて情報を検索しやすくすると
いうことです。

 間隔をあけて復習することは普通に行われていると思います。これを行うと情報が「
忘却」しにくい状態になるようです。覚えられないものを日を変えて再度確認することは
ある意味勉強の基本になっています。英単語を覚える覚えることを例にとってみましょ
う。1日英単語5個づつ覚えるとします。まず、何回か単語を書くことでスペルを覚えま
す。その日は日本語を見て英単語がちゃんと書けるか確認をします。もし、ここで2単語
スペルミスがある場合、この2単語を次の日にまわします。まずその日の5単語のスペ
ルを覚え、最後の英単語確認の時に前日の2単語を混ぜ7単語をチェックします。ここで
スペルミスをした単語は次の日にまわします。まわされる単語の中にはまた前日からの
単語がはいっているかもしれませんが、区別する必要は全くありません。そのようにして
いくうちに自分にとって難関だった英単語も軍門に下ります。もし次の日にまわす英単語
が、長期記憶の「想起」にでなく、短期記憶→長期記憶への「記銘」に不安がある場合、
最後のチェックからではなくその日の5単語を書いて覚える段階から一緒に行うほうがよ
いでしょう。

 もう一つの記憶と記憶の間に「関連性」をつけて情報を検索しやすくする方いろいろあ
ります。記憶の内容を一度イメージとして頭に浮かばせ記憶してく、動作と関連して記憶
していく等あるようです。英単語を記憶する場合の例で次のようなものがありました。英
単語10個を覚える場合、見開きの左ページにその単語の和訳が10個(アンダーライン
付)入っている文章が掲載され、右ページに10個の英単語が単語帳のように並べられ
ているのです。通常は左ページに英文が載っているのですが、今回の場合英文なしで
和訳の文のみあるわけです。日本人にとって最もなじみのある日本文の内容に英単語
がちりばめられている感じです。日本文を思い出せば英単語が思い出される仕組みで
す。関連付けを極端にした場合で、覚えるべき英単語(3~5単語)を一文の英文に入れ
てしまい、和訳→英文→単語として覚えていく方法もあります。この場合、一度覚えた後
で「和訳→英文」の音声を流しておくだけで「想起」のトレーニングにもなります。

 長期記憶については昔からいろいろな方法が提案されてきました。しかし、長期記憶
になる前の感覚記憶・短期記憶の段階で問題があって記憶できないのか、長期記憶に
なった後の「想起」「記憶の検索」に問題があって「想起」できないのかによって対応の仕
方も変わってくることをお分かりいただけたと思います。