短期記憶

 感覚記憶の強度が弱いと「問題と解いている間でも問題の内容を忘れる」ことがあるこ
とを前回述べましたが、今回は感覚記憶が送られる先の短期記憶についてです。短期
記憶の特徴は大きく二つあります。一つは一度に記憶できることは少ない(7前後とい
われています)、もう一つは記憶できる時間が短い(数秒~数十秒)ということです。そし
て短期記憶としてある程度の時間、ある程度の強度でもって記憶することができると次
の長期記憶に転送されます。

 記憶できることが少ないということはどういうことでしょうか。この頃は携帯電話の普及
で電話番号を直接覚えることが少なくなりましたが、以前はみな市内電話7桁程度の電
話番号をいくつも覚えていました。初見で見た電話番号も案外記憶したものでした。(も
ちろん重要な番号はメモしたりすることは当然ありましたが)この初見7桁が人間の短期
記憶の身の丈のようです。しかし、いろいろな要素と組み合わせるともっと多くの番号を
覚えることもできます。国際電話の番号の場合、国番号+市外局番+7桁となります。
皆さんは国番号、市外番号をいちいちそのままの番号で覚えているよりも、その前に日
本の国番号とか大阪の市外番号ということばとともにその番号を思い出していると思い
ます。この場合、日本の国番号、大阪の市外番号がそれぞれ短期記憶7個の一つの塊
として扱われ、数字そのものが増えても対応できるようになっているようです。

 もう一つの「記憶できる時間が短い」は皆さん日常生活で経験していると思います。料
理をしているときに電話がかかってきてしまい対応をしている間に時間が過ぎてしまい
(料理をしているということを忘れている)焦がしてしまったり、家族に頼まれたちょっとし
たことを突然の来客の訪問でし忘れてしまったり、いろいろ思い出すことができると思い
ます。これは残念ながら年齢を重ねるとより多くなるようです。

 短期記憶を保持する時間をある一定以上にしなければ次の長期記憶へ転送すること
はできません。保持時間を長くする方法はただ一つ、「繰り返すこと」です。漢字の練習も、
単語の記憶の基本はここにあるわけです。この「繰り返し」を繰り返すうちに短期記憶か
ら長期記憶へ転送がおこるようです。

 先程、家族に頼まれたちょっとしたことを来客の訪問で忘れた例を挙げました。こうい
う場合、後でふと思い出して慌ててやることもあると思います。これは短期記憶が思い出
されたというより、意識しないうちに一部が長期記憶に送付されそれが突然思い出され
たということだと思います。これを利用すると覚えようとしなくても覚える方法となります。
学校の授業を例にすると以下のようになります。授業を受ける前にできれば何が書いて
おあるか程度でも予習します。これは前回に感覚記憶の「内容に親しみをもたせる」にも
通じます。ざっとでも見ておくと自分の知っているところはよく印象付けることができると
思います。次に授業中に一生懸命板書をノートしていくか、配布されたプリントに必要な
マーキングを行います。そして授業終了直後に書いたノートやプリントに一通り目を通し
ます。ここまでの間に少なくとも同じ内容を都合3回、目(脳)に通していることになります。少々時間を置いての繰り返しですが、「心がけ」として行えば意識して行う記憶でなく意識
しないうちに記憶できることとなります。試してみてはいかがでしょうか。