5月2012

字を乱雑に書く

 小学生で漢字の個別トレーニングを主に受講している子が何人かいます。彼らは漢字を覚えることに主眼を置いて勉強しています。しかし、せっかく覚えた漢字を乱雑に速く書くことによって間違ったりすることがあります。「線がついているところはくっつけて」私が一番よく言うことです。字配りが少々よくなくても必要なパーツがちゃんと配置され、線がくっついているところがくっついる、跳ねは跳ねていれば正解とします。したがって上手に書く必要なく、最低限正確に書くことが必要なのです。しかし、乱雑に書くときは概して必ず急いで書いて正確性がなくなっています。実はこの急いで書いている癖の方が問題なのではないかと思います。習字は大好きで一所懸命ゆっくり書くのに、その他の教科では字を乱雑に書いている子をずーと昔に見たことがあります。たぶん習字以外の教科が好きではなく「面倒くさい、早く終わらせたい。」の気持ちが字に現れているのかもしれません。勉強に臨む気持ちより他のことが心の片隅にある場合(たとえば友達と遊ぶ時間が迫っている、塾の後のテレビ番組が気になる等)急いで乱雑に書くことになると想像できます。いったん「憂いのない状態」までにしてから勉強を開始しないとこの「急いで乱雑」は終わらないかもしれません。

 よく、「宿題終わってから遊びに行きなさい」という躾の基本のような言葉が、「急いで乱雑」な習慣を作っているかもしれないという話を本で読んだことがあります。子供によっては、遊びに行きたいのを我慢しノルマとしてしか感じない宿題をやること=勉強となり、それが繰り返されれば、結局先入観として勉強=「厄介で面倒」の悪印象が醸成され、行動では勉強となると「急いで乱雑」が繰り返され習慣化してしまうようです。この習慣化に抗するためには、なるべく「憂いのない状態」の中で勉強をしていこことが重要だと思いますが、その状態はどのように作ればよいのでしょうか。

 テキパキ仕事をしていくとき、脳内ではノルアドレナリンを分泌されます。一方ノルアドレナリンは怒ったときや逃げ出すときにも分泌します。ノルアドレナリンが分泌しすぎると怒りや逃げ出したくなる気分になるようです。その分泌を抑える調節をするのがセロトニンで、行き過ぎを防ぎ「テキパキ仕事を」する状態=「勉強継続」が維持できます。前回の話題「脳内物質セロトニン不足」の内容に即して言えば、いかにセロトニン不足を克服するかがカギになるようです。また、快楽神経伝達物質ドーパミンの分泌もセロトニンは調節しますので、いわゆる「依存症」対策としてもセロトニン不足解消は「精神の安定」として重要だと思います。

脳内物質セロトニン不足

ここ数回「勉強の耐久力」や「泣く子・怒る子」について述べてきましたが、双方とも「別の機会に述べていきたい・・・」という終わり方をしてきました。今回はその「別の機会」です。

 ここ約20年間、脳科学の発展は目を見張るものがありました。特に脳内の活動状況を外から測定することができたり、脳内物質の分泌程度の測定が容易になったりしたおかげです。教室の中で起きていた塾生たちの行動や様子を、心理学や精神分析だけでなく脳科学の言葉で表現ができるようになったということです。

  ここで登場する脳内物質はモノアミン神経伝達物質の3種です。快楽を増幅するドーパミン、意欲と生き残るために必須のノルアドレナリン、他の2種の神経伝達物質を制御し落ち着きと安定感をもたらすセロトニンです。これらの神経伝達物質についての詳細説明は多くの本やインターネットの中でなされていますのでそちらをご参照ください。

ドーパミンやノルアドレナリンが不足するとそれぞれ関心が薄らぎ精神機能が低下したり、無気力・意欲の低下が起こります。しかしこれらを総合的に調節しているセロトニンが不足するとうつ状態・パニック発作・摂食障害を起こし、起床後の覚醒状態を作れず、その後も調子がでません。また感情制御が効かなくなり攻撃的にもなります。セロトニンは夜になるとメラトニンという睡眠に関わる重要な脳内物質に変わります。セロトニンが不足することはメラトニンの不足=良質な睡眠の欠如というおまけまでついてきます。

「勉強の耐久力」が不足している子や「泣く子・怒る子」などの感情制御が効きにくくなっている子の原因は「セロトニンの不足」であると近年言われています。この辺の説明はセロトニン研究の第一人者、有田秀穂東邦大学教授の著書などをご参照ください。

有田教授の著書にはセロトニンの増やし方もちゃんと載っています。どれもこれも日常生活で実施可能なものばかりです。

・朝日を直接浴びる。
・リズミックな運動を一定時間行う。
・禅・ヨガ・各種武道などで使う丹田呼吸法 などです。

 これらの具体的方法(特に小中学生を対象とした)は別の機会にまた述べていきたいと思います。

勉強しながら泣く子、怒る子

比較的早い時間帯に小学生が授業を受けに来ています。必ずしも低学年という訳ではないのですが、勉強しながら泣き始めてしまう子・怒り始めてしまう子もいます。しかし少なくとも彼らはその場からは離れることなく勉強を続けている姿を私は少々の緊張感を感じながらも微笑ましく感じています。自分が問題が解けないなどの困難に直面したとき、自分の思うようにならない状況で泣いたり怒ったりする彼らの感情反応は理解できます。しかし最も重要で大切なことは、彼らは泣きながらも怒りながらも勉強を続けているということなのです。

よく「天才卓球少女」のビデオをみると悔しくて床に寝転んだり、泣きながら練習をしていたりする光景がよく映し出されました。しかしその天才卓球少女は今では大変すばらしいアスリートになっています。たぶん親御さんをはじめとする周りの方々が十分に本人を受け入れ支え、練習を継続されたのではないかと推測します。できなくて悔しくて、泣いたり怒ったりする子供たちも周りの人々の支えによりスポーツや勉強の奥義に触れ、それを自分のものにしつつ精神的にも安定した個人となっていくものと思います。問題は周りの人の「支え」です。全ての親御さんや先生方が「現在のじゃじゃ馬→未来の名馬」にできる方法そのものは「ノーベル賞もの」かもしれません。しかしどんな方法にしろもっとも必要なことは「長ーい目」で見ていくことと周りの「忍耐」ということではないでしょうか。しかしそれ以外全く方法がないわけでもないことが近年わかってきました。その辺の話は別の機会に述べていきたいと思います。

1年分の英語の復習方法

個別トレーニング英語の中に各学年の基本文を学習する単元があります。この英文の基本文が訳せるばかりでなく訳文から英文が出てくるようになればそれは英作文演習そのものです。英作文は単語・文法をいっぺんに学習できるという利点があります。これを利用すれば1年分の英語の復習ができます。

個別トレーニングの基本文は英文と日本文が左右に分かれて一単元に6例文あります。学習方法は以下のとおりです。

・まず英文を見て日本文に訳せるか確認する。(日本文は隠しながら行う)
・英文を何回も大きな声で音読し英文が口になじむまで読み込む。
・英文を隠し、ヒントとして日本文を見て英文を思い出し音読する。
・英文が出てこなかったら隠してある英文を見て音読する。
・6例文すべての英文が口からでるようになったらその単元の第一段階は終了。
・第二段階は第一段階と同様、日本文を見て英文が書けるようになるまで繰り返す。

上記の場合は英作文というより基本文を覚えていくことが中心となりますが、英作文演習の基礎を成すことにはちがいないと思います。英作文ができるようになればそこの単元の学習は完了と考えてよいと思います。

1年間の学習内容が60~72例文で復習できるこの方法はとても効率的な学習法です。個別トレーニングとっている塾生の何人かにこの方法を話したとき、彼らが目を輝かしていたのが印象的でした。長期休業中などを利用して行うのがお勧めです。