感覚記憶‏

前回は、漢字を覚えるという学習を通じて「記憶する」ということを概観してみました。

「記憶する」は感覚記憶・短期記憶・長期記憶の部分に分けることができますが、今後

それぞれについて少々述べていきます。今回は「感覚記憶」についてです。

 

感覚記憶は「見たもの・聞いたもの」を「とりあえず」数秒間記憶する記憶です。見た

もの、聞いたもの全てを記憶するととてつもない情報量を保持しなければならないの

ですが、「重要でない・注意をひかない」ものなどはすぐに消去されてしまいますので安

心です。この頃テレビ番組で取り上げられるアハ体験の映像が分かり難いのも「すぐに

消去」されてしまうからです。「重要だ・意味がある」と選択された情報だけが短期記憶に

送られ、記憶することが継続されます。同じ授業を聞いても人によってそこから得る情報

量が違うことがよくあります。すごく集中している人は寸分逃さず記憶し、他の事が気に

なりながらいる人は情報が「右から左へ」となってしまいます。感覚記憶を「選択」し短期

記憶に送り込むことがうまくできなければそれ以降の「記憶の過程」は意味をなしません。

 

それでは感覚記憶からうまく「選択」する方法はどんなことがあるでしょうか。まずは皆

さんが思われる通り、「注意・集中そして興味」のレベルを下げないようすることです。こ

のレベルが下がると皆さんも経験があるとおり、脳は全く「右から左」の状態になりま

す。勉強を開始する前にその内容に注意・興味を集中することが重要です。または講師

の先生からすると個別指導を行う前に塾生諸君にその授業内容に興味を持ってもらうこ

とです。いわゆる「つかみ」でしょうか。これがうまくいかないと以後の勉強の質が違って

くることは容易に想像できます。そしてもうひとつ「注意・集中そして興味」は長時間持続

するのは難しいので適宜休憩・気分転換をいれるのは言うまでもありません。

 

第二の方法は「行動をしながらより意識化」することです。重要なところにマーカーを

付ける、相槌を打ちながら話を聞く、音読をする、視覚的に指差し確認を行う、・・・・。

誰しもが普通に行っていることです。しかし、日々心がけとしてこれらを行っていったと

すると、行わなかった場合と比べその効果は明らかです。

 

最後の方法は「予習する」「型を身につける」ということです。人の脳はなじみの少ない

ものを無用の情報として「無視する」傾向があります。したがって、これから学習すること

(または言葉)を予習すると、「あ、見たこと・聞いたことがある」と脳が反応し無視しにくく

なります。また、学習の型を身に付けておくと、その型と違う内容に遭遇したときに「あれ、

今までと違う」と違和感を感じ、よりその内容を選択しやすくなります。

 

記憶の入り口である感覚記憶、そしてその中から「選択」し次の工程=短期記憶に情

報を送り込むこの段階は「記憶する」ことの要といっても過言ではありません。いろいろ

工夫していきましょう。