ドーパミンは集中した気持ちを途切らせる

人が何か達成できて「やった!!」という気持ちのとき、快楽神経伝達物質のドーパミンが分泌されます。しかしドーパミン分泌による喜びは集中していた気持ちを途切らせます。ドーパミンは達成したという事実で分泌されるのではなく、達成されそうだという予想が立ったとき分泌されるそうです。北京オリンピック100m決勝でウサイン ボルトがゴール直前でスピードが緩んだように見えたのはあまりにも有名です。また、100m平泳ぎの北島康介が最後の5mで失速し、北京オリンピック国内選考会で世界新記録を逃したことがありました。その後本番に向け北島選手は電光掲示板を自分の目で見るまでレースは終わらないものとして緊張を切らさない練習し、北京オリンピックでは世界新記録金メダルを獲得しました。

 この話は一流の運動選手の話で一般人にはあまり関係ない話のようにも思われますが、胸に手をあてて見回すと私たちの周りにもこれと似た話があります。どう解いたら分からない数学の問題で、ピカっと解法が閃き解答に着手していったは良いが、最後の最後に計算ミスをしてしまった、プラスとマイナスを間違えた・・・・。試験の終わりには「できた!!」という感覚だけがのこっていて今までにない高得点を期待していたが、却ってきた成績はいつもとあまり変わらない・・・。

 勉強の中で「やった!!」という気持ちが全然ないと、砂を噛むような味気ないものとなってしまいます。「やった!!」という気持ちは最初だけにし、後はてきぱき仕事をこなしていく状態(セロトニンが分泌され、ドーパミンと緊張を引き起こすノルアドレナリンが適度に制御されている状態)を継続できれば、これほど効率的な勉強はないと思います。

 鍵は「勉強の耐久力」の原動力となるセロトニン分泌を促進する生活を送れるかです。日頃のちょっとしたこと(例えば朝の散歩・リズム運動15~30分)が大きな差を生むのではないでしょうか。

 勉強で「やった!!」という気持ちを体験(ドーパミンの分泌)することは大切です。しかし同じドーパミンを分泌させる「テレビゲーム」等強烈な刺激が世の中や家庭に氾濫しています。勉強の「やった!!」という興奮よりどうしても「他の強い刺激」を追求するようになり所謂「依存状態」へ誘ってしまうようです。テレビゲーム等を行っている過程はまさにこの状態で、ドーパミンを制御するセロトニンは全く分泌されず依存状態が続き、一方でノルアドレナリン分泌の行き過ぎ=緊張→怒りも制御されず一発触発の空恐ろしい状態です。勉強やその他の作業を「セロトニン潤沢=精神的安定」の中で行う方法を確立できれば、子供たちが抱える様々な「依存状態」「キレる状態」等からの脱却の道筋が見えてくるのではないでしょうか。