脳のワーキングメモリー

 脳の働きには「記憶する」「思考する」などがありますが、その作業を行うために頻繁に使用されるのが「ワーキングメモリー」と称される基礎的部分です。現在はコンピューターの普及によって、中央演算部(CPU)とメモリー(RAM)の関係がよく認識されています。まずメモリーに必要な数値を置き、次にその数値を中央演算部で演算しその結果をメモリーに再度置く。これが脳の中でも行われているのです。ワーキングメモリーとは「作業のための記憶」何らかの知的作業を行うために外部から情報や記憶を一時的に記憶することです。言い換えれば、脳のメモ帳に一時的に貼り付け作業をすることです。

 ワーキングメモリーを使っていることを実感する脳トレの例をあげてみましょう。
 まず、四つの言葉を覚えていただきます。「いす・さくら・みぞれ・まゆげ」
 その後「天の川」を反対から声に出して言っていただきます。
 最後に最初に覚えていただいた四つの言葉を思い出して声に出してください。

 ワーキングメモリー、脳のメモ帳をいくつも使っているのを感じることができるかと思います。これ以外にもいろいろな方法が「脳トレ」として世間に出回っています。メモをたくさん張って使うことができることが昔から「頭がよい」とか「回転が速い」といわれてきたのだと思います。これを伸ばすことが子供にとって最も必要なことで、中高年にとってはなるべく維持することが課題となると思います。ワーキングメモリーは脳の他の部分と違い、成人までゆっくり発達し、その後ゆっくり落ちてきますが個人差が大きくなっています。傾向として年をとっても頭を使っている方のほうが落ちにくいようです。

 従来からある学校教育はこのワーキングメモリーを鍛える内容が満載です。漢字の書き取りをする場合もお手本を一時的に記憶しないとできません。繰り上がり繰り下がりのある計算もそれを一時的に記憶しないとできません。算数や数学で文章題を解くときも文章の内容を式に置き換える間一時的に記憶します。これらの内容を駆使できることが教育の目的のひとつなのだと思います。しかし学校の勉強に飽きてしまった場合、先程紹介した「脳トレ」を行うことでもってワーキングメモリーを鍛え、その後いつもの勉強を行うことも一つの方法かと思います。