地頭力強化の好循環

この頃大学生の就職場面で、採用の判断に地頭力を重要視しているという記事がありま

 

した。世間で言う地頭力のあるタイプとは、あらゆる問題を解決する上での「考える力」

 

が強いタイプのことだそうです。そして「考える」だでなくそれを「実行する力」も含ま

 

れるとか。これは知識の集積度を測る現在の学校の評価ではなかなか表現しにくい内容と

 

思われます。

 

 

とある小学生がこの「地頭力」を評価してもらったと思しきエピソードを紹介します。

 

今から45年も前の小学校4年生の教室である。夏休みが終わって皆、夏休みの宿題の

 

図画工作を携え登校してきた。きれいに仕上げのラッカーを塗ったヨットの模型や夏の

 

海岸を写生した絵、皆力作ぞろいであった。一人の少年が大きな風呂敷包みをもって不

 

安そうな顔をして自分の席に座っている。だれかが「見せろよ」といって中を覗こうと

 

しても中身を見せなかった。昔の先生はクラスの皆が見ている前で一人一人の作品を評

 

価し、名札に「優・良」のゴム印を押して行った。皆ドキドキしながら自分の番を待っ

 

ていた。大体の児童は「優」をもらっていた。「良」の子がいたかどうか定かではない。

 

そのうち先程の風呂敷包みの少年の番になった。風呂敷を開くと中から白い画用紙で作っ

 

た風力計の模型が出てきた。3つの風杯を持ち、軸には2枚のベルト状の画用紙が張り付

 

けられその先に小さな粘土の重りがついていた。強い風が吹くと風力計は早く周り、粘

 

土の重りが回る半径が大きくなるという代物。画用紙の本体・風杯は画用紙のままで無着

 

色、おまけに接着に使った黄色いボンドがあちこちからはみ出していてお世辞にも出来

 

がよいとは言えなかった。クラスの皆が気の毒そうな目で見る中、先生の前にこの作品

 

を提出した。この先生は厳しいことで有名で、当時許されていた「愛のむち」もよく振

 

るわれた。少年はおそるおそる先生の顔を覗いた。先生は「ムーン」と一度唸ると動か

 

なかった。少年が下を向き続けていると、先生はやおらゴム印を取り出し名札のところ

 

に押した。少年は薄目でゴム印を見ると「秀」となっていた。先生は立ち上がり教室の

 

皆に話し始めた。「この作品はきれいにはできていない。しかし、風の速さを表す工夫

 

がよくできている。この工夫を工作として作ってきたことがたいへんよい。」少年はぽ

 

かんとしていたが、少なくとも叱られなかったがうれしかったようだ。後で聞いたのだ

 

が、少年は工作の宿題を前日にやっつけでやって、それが分かって先生に叱られるので

 

はないかとヒヤヒヤしていたということであった。

 

 

今回のこの話はある意味あまり褒められた話ではありませんが、工夫をしたものを自

 

力で形にして持ってきたことに対し先生が評価をしてくださったことがポイントとなり

 

ます。どの子も地頭力はこのようなちょっとした場面に顔を出しているのかもしれません。

 

子供たちが工夫をして何かをしたり、しようとしていたらまず褒めることが肝要と思い

 

ます。それがその子にとって「人生のやる気」を助長し地頭力強化になる好循環が見え

 

ます。ものの本によると地頭力は遺伝的要因より後天的要因の方が大きく、また60歳を

 

過ぎても発達する可能性があるそうです。年齢に関係なくだれにでもこの好循環は「プ

 

ラス」であること間違いないと思います。